◎岐阜県羽島市の助産院です◎

助産師の役割

国際助産師連盟(以下ICM)所信声明の日本語訳を読んでいたところ、助産所を利用する皆様方に助産について理解していただくために最適と思われる部分があったのでご紹介したいと思います。以下はICM所信声明の日本語訳の一部抜粋です。

※ICM所信声明は、2005年7月にICM理事会にて承認されたものです。

助産ケアの哲学と助産ケアのモデル Philosophy and Model of Midwifery Care

(背景) 

 助産師とは、国によって正式に認可された助産師教育課程に正式に入学し、助産学の所定の科目を履修した者で、助産業務を行うために登録され、法律により免許を与えられるために必要な資格を取得した者である。

 国際助産師連盟は助産師が哲学に基づいたケアを提供しており、それがケアのモデルに影響を与えていると信じている。本資料ではその哲学の概要と助産ケアのモデルを解説する。

(所信声明)

 助産師として当連盟は以下のように考える

1.妊娠は女性と家族またコミュニティーにとって、とても意味のある感慨深い経験である。

2.出産は正常な生理学的過程である。

3.助産師は女性の妊娠期、陣痛期、出産、新生児期に付き添う最適なケア提供者である。

4.助産ケアは女性に自分とその家族の健康を担う責任を持てるように力づける。

5.助産ケアは女性とのパートナーシップのなかで行われ、個人のニーズに合わせた、継続的、そして

  非権威主義的なものである。

6.助産ケアは人文と科学が融合したものである。助産ケアは統合的な性質をもち、女性の社会的、

  情緒的、文化的、精神的、心理的、身体的体験の理解と現在利用できる最善の証拠に基づいたもの

  である。

7.助産師は女性と出産時女性が発揮できる能力に確信と信頼をおき、尊重している。

8.女性がケア提供時の主要な意思決定者であって、女性はその決定能力を向上させる情報を知る権利

  がある。

  

成果として以下のものがあげられる

1.助産ケアは女性のリプロダクティブ・ライツを促進、保護、支持し、民族的・文化的多様性を尊重

  する。

        *リプロダクティブ・ライツ・・・性と生殖に関する権利

2.助産の実践は医療介入のない正常出産を促進、主張する。

3.助産の実践は女性が出産に対応できる自信をつける。

4.助産師は適切に技術を利用し、問題が起きたとき時機を逃さず転送する。

5.助産師は予期的また柔軟性のあるケアを提供する。

6.助産師は女性に適切な情報とアドバイスを提供することで、十分な情報を得た上で意思決定に参加

  することができるように促進、手助けする。

7.助産ケアは助産師と女性間の信頼と相互尊重を維持する。

8.助産ケアは女性の健康を積極的に促進・保護し、児の健康状態を向上させる。

助産師の声明

社団法人日本助産師会は、平成18年2月20日「助産師の声明」を公表しています。

「助産師の声明」では、助産師の定義、助産師の理念、助産師の倫理綱領、助産師の役割・責務について書かれています。内容のすべてをここに掲載することはできませんが、助産所を利用される皆様に知っていただくとよいのでは、と思われる部分をご紹介致します。

よいお産を迎えるための助産師との関係作りに役立てて下さい。

※下記は「助産師の声明  編集:日本助産師会業務検討委員会」からの1部抜粋です。

Ⅰ 助産師の定義

 【助産師】とは、法に定められた所定の課程を修了し、助産師国家試験に合格して、助産師籍に登録し、業務に従事するための免許を法的に取得した者である。

 助産師は、女性の妊娠、分娩、産褥の各期において、自らの専門的な判断と技術に基づき必要なケアを行う。これらのケアには予防的措置や異常の早期発見、医学的措置を得ることなど、必要に応じた救急処置の実施が含まれる。さらに、助産師は母子のみならず、女性の生涯における性と生殖に関わる健康相談や教育活動を通して家族や地域社会に広く貢献する。その活動は育児やウイメンズ・ヘルスケア活動を包含する。助産師は、病院、診療所、助産所、市町村保健センター、自宅、教育、研究機関、行政機関、母子福祉施設、その他の助産業務を必要とするサービスの場で業務を行うことができる。

 Ⅱ 助産師の理念

【助産師の理念】とは、助産師の全活動を支える哲学的基盤であり、助産師としてもつべき必須の概念である。助産師はこの理念の基に、助産師業務の権限を行使することができる。

1.生命の尊重

 人間の生命には、各人の限りある生命と、親から子、子から孫へと受け継がれる生命がある。助産師は、女性とそのパートナーの生命、生まれ来る子どもの生命、そして子どもが親になることへの萌芽に関与する。

 人間の生命に関わる助産師は、その根底において、人間を愛し生命を尊ぶ者である。女性と子どもの生命の尊重とともに、その生命を支える他者の生命への畏敬、そして生命に関わることの責任感を片時も忘れない。さらに、生命の意味を探求し続け、これに寄与することに最大限の努力を惜しまない。

 以上の信念を行動で示すことのできる者が助産師である。

2.自然性の尊重

 助産師は、自然性を尊重する。

 助産にとっての自然性とは、科学・技術の進歩に伴って生じた人為的介入に相対する概念である。

 自然性を尊重した助産とは、人が本来もつ生理的・精神心理的機能を尊重し、専門的知識や経験、人的・物的資源、身体的・心理社会的サポートなどを活用しながら、女性と子どもおよび家族が本質的にもっている能力を最大限に発揮させる行為である。その行為の結果、健康を維持・増進することである。

 健康な生理現象において人為的介入が許されるのは、自然性が損なわれず、自然との調和を保ちうる場合であり、助産においても例外ではない。

3.智の尊重

 助産師の活動の対象となる人間や環境および生命現象に対して、専門的立場から寄せる知的好奇心、関心を「智の尊重」という。智とは、感性と知性をつなぐものであり、物事を理解し、是非や善悪を判断する心の働きである。

 生命の意味を追求し、自然性に目を向ける助産師にとって必要なのは、感性と知性の統合である。本来、両者は2つに分けられるべきものではなく、互いに関係しあい、高めあう者である。助産師が、何かに失敗したと感じたり、自信を失いかけたりしたときにも、この智の尊重の精神があれば、新たな道を創造する勇気と情熱をもつことができる。

 知性には、経験的知識と科学的知識が存在する。経験的知識は、女性と子どもおよび家族と直接かかわり、的確な技術を身につけることによって蓄積される。科学的知識は、学問や研究を通して得られ、両者は相互に関連し統合されて、助産師の感性を高める。それは、助産師全体の専門性の進歩と水準の向上に寄与する。この知性は、女性と子どもおよび家族の利益にも大きく影響する。

 Ⅲ 助産師の倫理綱領

1.生命、人間としての尊厳と権利の尊重

 ●助産師は、女性と子どもおよび家族の生命、人間としての尊厳と権利を尊重する。

2.平等なケアの提供

 ●助産師は、女性と子どもおよび家族に対して、国籍、人種、宗教、社会的地位、ライフスタイル、性的指向などによる何らの差別を設けずに、平等にケアを提供する。

3.最善のケアの提供

 ●助産師は、女性と子どもおよび家族にとって最善のケアを提供する。

4.信頼関係に基づいたケアの提供

 ●助産師は、女性と子どもおよび家族との間に信頼関係を築きつつケアを提供する。

5.権利の尊重と支援

 ●助産師は、女性と子どもおよび家族の知る権利と自己決定する権利を尊重するとともに、女性と子どもおよび家族が自ら選択した結果に対する責任を引き受けることを支援する。

6.秘密の保持

 ●助産師は、個人のプライバシーを守るために、女性と子どもおよび家族に関する情報の保護を遵守する。

7.自己の決定と行動に対する責任

 ●助産師は、自己の決定と行動に対して責任をもち、さらに、女性と子どもおよび家族へのケアに関する説明責任を有する。

8.専門的知識や技術の発展

 ●助産師は、実践、教育、研究に従事して、助産業務に関する専門的知識や技術を発展させる。

9.専門職能団体による職能的水準の維持

 ●助産師は、専門職として職能団体を組織し、職業の水準を検討し、会員が提供する業務の質を利用者に保証する社会的責務を負う。

10.保健政策の実施

 ●助産師は、女性と子どもおよび家族の健康を増進する保健政策の策定と実施に参画する。

11.自己の健康の保持・増進

 ●助産師は、助産師自身の健康保持・健康増進に努める。

※この後に「助産師の声明」では、助産師の役割・責務、助産管理における役割・責務、専門職としての自律を保つための役割・責務、が続きますが、ここでは割愛します。

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